【短篇小说】不知梦(4)

ユメシラズ
ぼくは殺し屋をやっている。白く染まっている髪に、よく見かける黒いハットを被っている。黒シャツにベージュのコート、更に銀色の古そうな星のネックレスを飾っている。殺し屋とは思えないお洒落な格好だ。今日も何時も通りに、常連のバーでカクテルを飲んでいる。しかし、何時もと違って、今日はぼくに任務(ミッション)があるのだ。そう、このバーで人を殺す任務だ。
このバーの名前は「ユメシラズ」という、妙な名前だな、と今でも思う。ぼくは何時このバーに出会ったのかは、もう覚えていない。気が付いたら常連になって、バーテンダーさんとも仲良くなった。此処は何時も美味いカクテルを提供してくれて、お酒とその他の副材料も品揃えで、記憶には自分のリクエストに答えられなかったことが一度もない。

「こんなに素晴らしいバーはこれ以外見つけられないだろう。嗚呼。此処で人を殺したら、もう此処には来れないのだろう。」とぼくは思っているけど、結局任務には背くことができないのだろう。殺し屋にとって、任務は全てだからだ。
最後に、一杯を飲もうか、とぼくが思いつつ、バーテンダーさんに顔を向けた。「何か今のぼくに似合うものでもあるか？」とぼくが問うた。
「何か悩んでますね。私ですらあなたの気持ちは分からないけど、お客さんの悩みはほっといちゃってダメですね。」と彼女が言った後に、勝手に手が動き始めた。何を作ろうとしているのか、ぼくにはさっぱり分からないが、まあ、此処は専門家に任せる。彼女が何時ものように、手際良くグラスを手に取り、グラスと同じ大きさの四角い氷を一つ入れた。シェイカーにジンとウォッカを一カップずつ入れて、さらにブドウリキュールとレモンジュースをそれぞれメジャーカップで量って加えた。シェイカーを手に持ち、手早く上下に振り始めた。一分立った。彼女は手を止めって、シェイカーの中のものを一気にグラスに注いだ。綺麗な紫色だ。その艶々しい紫色の液体に、さらに白いココナッツジュースをかけて、レモン一切とミント一葉を乗せて、出来上がった。