最後の真珠(2)
「そんなにあわてなくても、いつか必ず来ますよ」
「いいや、待っているぐらいなら、わたしが取りに行こう。どこへ行けば、良いのだ?」
すると子どもを守る神さまは、仕方なく言いました。
「そこまで言うのなら、最後の妖精のいるところへ連れて行ってあげましょう」
子どもを守る神さまは、家を守る神さまの手を取って飛んで行きました。
そして飛びながら、最後の妖精の事を言いました。
「最後の妖精は、決まったところにいません。王さまの家にも、貧しい人の家にも、誰の家にも必ず最後の贈り物を持って行くのです。確か今は、この辺りの家に来ているはずです。・・・ああ、ここです」
子どもを守る神さまが案内したのは、町外れのお屋敷の大きな暗い部屋でした。
その部屋には、お父さんと子どもたちだけしかいません。
一番小さい子は、お父さんに抱かれています。
実は、この家のお母さんがたった今、病気で死んでしまったのです。
子どもたちのほっぺたは涙にぬれて、しくしくと泣く声が部屋を包んでいます。
家を守る神さまが、子どもを守る神さまに言いました。
「ここには、いい贈り物を持っている、最後の妖精はいませんね」
「いいえ、ここにいますよ」
子どもを守る神さまは、部屋のすみを指差しました。
それは、お母さんが子どもたちをひざに乗せて、歌を歌って遊ばせていた椅子です。
その椅子には、見知らぬ女の人が長い服を着て腰かけています。
子どもを守る神さまは、そっと言いました。