愛犬の神通力
2023-10-27 来源:百合文库
むかしむかし、藤原道長(ふじわらみちなが)という人が、京の都にお寺を建てました。
道長は白い犬を飼っており、散歩の時はいつもこの犬を連れ歩くほど可愛がっていました。
ある日の事、道長は自分が建てたお寺の門をくぐって、お堂へお参りに行こうとすると、連れている愛犬が急に行く手をふさいで、
ワンワン! ワンワン!
と、何度も吠えたてるのです。
「これ、どうしたんじゃ?」
道長は立ち止まって言いましたが、特に変わった様子もないなので、また歩き出そうとしました。
すると今度は、愛犬が道長の衣のすそを口にくわえて、強くその場に引きとめるのです。
愛犬がこんな事をするのは、初めての事です。
(これは、何か異変を伝えようとしているのか?)
道長はそう思うと、その場から一歩も動かず、お供の者に持ってこさせたいすに腰をおろしました。