舞茸(2)
木こりたちは、あわてて木の上に隠れました。
でも尼さんたちは木こりたちの居場所を知っているように、踊りながらどんどん近づいてきます。
そこで一人の木こりが、勇気を出して尋ねました。
「もし、そこの尼さま。こんな山中を、どうしてその様に踊り回っておられるのですか?」
大声で笑いながら踊り狂っている尼さんたちの一人が、やはり舞い踊りながら答えました。
「不思議に思われるのは、当然です。実は私たちにも、どうしてよいのかわからないのですから。
私たちは、この山寺に住む尼で、仏さまにお備えする花をつんでこようと出かけて来たのです。
でもどうした事か道に迷ってしまい、お腹も空いてほとほと困り果てていました。
そして、どうせこのまま死ぬのなら、せめてお腹だけでも満たそうと、そばに生えていたキノコを一口づつ食べたのです。
するとそのキノコがとてもおいしく、この世の物とも思えないほどでした。
それでまわりにあったキノコというキノコを、みんな食べ尽くしてしまいました。
仏さまに仕える身でありながら、あさましく食べた天罰なのでしょうか。
その不思議なキノコを食べ終わったとたん、私たちの手足は、ほれこの通り、勝手に踊り出して止める事が出来なくなったのです」
話を聞いた木こりたちはびっくりしましたが、食べても死ぬ事がないのならと、残りのキノコを分けてくれる様に尼さんたちに頼みました。