かめかつぎ
2023-08-01 来源:百合文库
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
あるお正月の事です。
町へ行った吉四六さんは瀬戸物屋へ立ち寄って、十枚ひと組の皿を五十文で買って来ました。
ところが家に戻って数えてみると、十枚あるはずが九枚しかありません。
瀬戸物屋の主人の重兵衛(じゅうべえ)が、数え間違えたのでしょう。
重兵衛はへそ曲がりで有名でしたが、吉四六さんとは顔見知りだったので、二、三日たって町へ行ったついでに店に立ち寄り、
「重兵衛さん、この間買った、十枚ひと組の皿の事だが、家に戻って数えてみたら一枚少なかったよ」
と、言いました。
ところが重兵衛は、
「そうかい、それは気の毒でしたなあ。じゃ、代金は九枚分だけもらっておくよ」
と、いつもと違って、ニコニコしながら言いました。
「おや? 重兵衛さん、今日はやけに話が分かるねえ。まあ、代金は九枚分にしなくてもいいから、足りなかった分の皿を一枚もらって行くよ」
そう言って、同じ皿を一枚取った吉四六さんが店を出ようとすると、重兵衛さんがあわてて引き止めました。
「おいおい、吉四六さん、ちょっと待って!」