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名篇阅读《故乡》(日汉对照)(5)

2023-08-02 来源:百合文库
今、母の口から彼の名が出たので、この子供のころの思い出が、電光のように一挙によみがえり、わたしはやっと美しい故郷を見た思いがした。わたしはすぐこう答えた。
「そりゃいいな。で──今、どんな? ……。」
「どんなって……やっぱり、楽ではないようだが……。」そう答えて母は、戸外へ目をやった。
「あの連中、また来ている。道具を買うという口実で、その辺にあるものを勝手に持っていくのさ。ちょっと見てくるからね。」
母は立ち上がって出ていった。外では、数人の女の声がしていた。わたしは宏児をこちらへ呼んで、話し相手になってやった。字は書ける? よそへ行くの、うれしい? などなど。
「汽車に乗ってゆくの?」
「汽車に乗ってゆくんだよ。」
「お船は?」
「初めに、お船に乗って……。」
「まあまあ、こんなになって、ひげをこんなに生やして。」不意にかん高い声が響いた。
びっくりして頭を上げてみると、わたしの前には、ほお骨の出た、唇の薄い、五十がらみの女が立っていた。両手を腰にあてがい、スカートをはかないズボン姿で足を開いて立ったところは、まるで製図用の脚の細いコンパスそっくりだった。

名篇阅读《故乡》(日汉对照)


わたしはドキンとした。
「忘れたかね? よくだっこしてあげたものだが。」
ますますドキンとした。幸い、母が現れて口添えしてくれた。
「長いこと家にいなかったから、見忘れてしまってね。おまえ、覚えているだろ。」
とわたしに向かって、「ほら、筋向かいの楊おばさん……豆腐屋の。」
そうそう、思い出した。そういえば子供のころ、筋向かいの豆腐屋に、楊おばさんという人が一日じゅう座っていて、「豆腐屋小町」と呼ばれていたっけ。しかし、その人なら白粉を塗っていたし、ほお骨もこんなに出ていないし、唇もこんなに薄くはなかったはずだ。それに一日じゅう座っていたのだから、こんなコンパスのような姿勢は、見ようにも見られなかった。そのころうわさでは、彼女のおかげで豆腐屋は商売繁盛だとされた。たぶん年齢のせいだろうか、わたしはそういうことにさっぱり関心がなかった。そのため見忘れてしまったのである。ところがコンパスのほうでは、それがいかにも不服らしく、さげすむような表情を見せた。まるでフランス人のくせにナポレオンを知らず、アメリカ人のくせにワシントンを知らぬのをあざけるといった調子で、冷笑を浮かべながら、

名篇阅读《故乡》(日汉对照)


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