頭の池
むかしむかし、あるところに、どうにも貧乏な男がいました。

「人並みに暮らしたいなあ。・・・そうだ、観音様(かんのんさま)にお願いしてみよう」

男が村の観音様に通って、お参りを続けていると、ある晩、観音様が現れて、
「いいだろう。お前の願い、叶えてしんぜよう。夜が明けたらお宮の石段を降りていって、最初に見つけた物を拾い、それを大事にしなさい」
と、告げました。
やがて男が石段を降りて行くと、何か落ちています。
「ははん。これだな」
拾いあげると、それはカキのタネでした。

「何だ、こんな物か」
男は捨てようかと思いましたが、せっかくお告げをもらったのですから粗末に出来ません。
ありがたくおしいただくと、これは不思議。

カキのタネが男のひたいにピタッと張り付いて、取ろうにも取れません。
「まあいい、このままにしておこう」
すると間もなく、カキのタネから芽が出て来ました。

芽はズンズン伸びて、立派な木になりました。
男がたまげていると、カキの木は枝いっぱいに花をつけ、花が終わると鈴なりに実をつけました。

「うまそうだな。試しに食べてみよう」
男が食べてみると、甘いのなんの。
男はさっそく、町へカキを売りに行きました。
「頭にカキの木とは、珍しい」
「おれにもくれ」