牡丹の花と若者(2)
2023-08-02日语睡前故事20210328 来源:百合文库
そこはちょうど馬の背中の様に、右を見ても左を見ても切り立った岩山です。
それでも若者は花を見たい一心で岩角を掴み、木の根につかまって高い崖の上をはう様にして渡って行きました。
何とか渡り終わると、そこは目の覚める様な一面のお花畑です。
見た事もない大きな牡丹(ぼたん)の花が、いっせいに咲ききそっていました。
「ああ、こんな山の中に、こんなに美しい牡丹の花があるとは。それにしても、もう季節もはずれているのに」
どう考えても不思議ですが、でも花の大好きな若者は夢の中へ誘い込まれる様な香りに胸を踊らせて、しげしげと花に見とれていました。
たくさんの花の中でも、特別あざやかな花を咲かせた大牡丹が、ひときわ若者の目を引きつけました。
「ああ、何と美しいのだろう。こんな花を家の庭に咲かす事が出来たら」
と、思わず、つぶやいた時です。
突然花のかげから、一人の乙女(おとめ)が現れました。
まるで天女の様な、美しい乙女です。
(こんな所に人がいるとは。まさか天女?)
不思議に思いながらも、若者はその乙女を見つめていました。
乙女は何の音も立てずに若者のそばへ近よって来ると、にっこりと笑って言いました。
「その花を一枝、わたしに折って下さいな」
その声があまりにも綺麗だったので、若者はびっくりしました。
「どうか、その花を一枝、わたしに折って下さいな」
乙女は大きな美しい牡丹の花を指さして、また言いました。
「はっ、はい。しかしここは、わたしの花畑ではありません。どの花も、勝手に折るわけにはいきません」
「いいのですよ。ここは、わたしたちの花畑です。その花は、わたしなのです。どうか、あなたのお手で。・・・あなたのお手で、折って下さい」
その声は前と違って、とても寂しそうです。
(自分の言葉が、乙女の心を傷つけたのかもしれぬ)
若者はそう思って、指差された花の一枝を折り取って、女の手に渡しました。
その途端、若者は気を失って、ばったりと倒れてしまったのです。
さて、それからどのくらい時がたったのでしょうか、どこか遠くの方で、誰かが呼んでいます。
それでも若者は花を見たい一心で岩角を掴み、木の根につかまって高い崖の上をはう様にして渡って行きました。
何とか渡り終わると、そこは目の覚める様な一面のお花畑です。
見た事もない大きな牡丹(ぼたん)の花が、いっせいに咲ききそっていました。
「ああ、こんな山の中に、こんなに美しい牡丹の花があるとは。それにしても、もう季節もはずれているのに」
どう考えても不思議ですが、でも花の大好きな若者は夢の中へ誘い込まれる様な香りに胸を踊らせて、しげしげと花に見とれていました。
たくさんの花の中でも、特別あざやかな花を咲かせた大牡丹が、ひときわ若者の目を引きつけました。
「ああ、何と美しいのだろう。こんな花を家の庭に咲かす事が出来たら」
と、思わず、つぶやいた時です。
突然花のかげから、一人の乙女(おとめ)が現れました。
まるで天女の様な、美しい乙女です。
(こんな所に人がいるとは。まさか天女?)
不思議に思いながらも、若者はその乙女を見つめていました。
乙女は何の音も立てずに若者のそばへ近よって来ると、にっこりと笑って言いました。
「その花を一枝、わたしに折って下さいな」
その声があまりにも綺麗だったので、若者はびっくりしました。
「どうか、その花を一枝、わたしに折って下さいな」
乙女は大きな美しい牡丹の花を指さして、また言いました。
「はっ、はい。しかしここは、わたしの花畑ではありません。どの花も、勝手に折るわけにはいきません」
「いいのですよ。ここは、わたしたちの花畑です。その花は、わたしなのです。どうか、あなたのお手で。・・・あなたのお手で、折って下さい」
その声は前と違って、とても寂しそうです。
(自分の言葉が、乙女の心を傷つけたのかもしれぬ)
若者はそう思って、指差された花の一枝を折り取って、女の手に渡しました。
その途端、若者は気を失って、ばったりと倒れてしまったのです。
さて、それからどのくらい時がたったのでしょうか、どこか遠くの方で、誰かが呼んでいます。