カニの相撲(2)
2023-08-01日语睡前故事20210326 来源:百合文库
「はい。ありがとうございます」
その家来は大きいカニを一匹もらって、得意そうな顔をしました。
すると、もう一人の家来が言いました。
「わたくしは、書が趣味です。ですから紙を押さえる文鎮(ぶんちん→紙が動かない様にする重り)にしたいと思います」
「そうかそうか。文鎮なら良かろう。ただ、文鎮では大きすぎては邪魔だから、小さいのを一匹つかわそう」
「はい。ありがとうございます」
その家来は小さいカニを一匹もらって、少し残念そうな顔をしました。
それからみんなは、次々と色々な事を言ってカニをもらいました。
「わたくしは、子どもや孫の代まで、いいえ、もっと先まで伝えて、家の守り神にしたいと存じます」
「わたくしは、・・・」
「わたくしは、・・・」
ところが家来の一人の曽呂利(そろり)さんだけは、みんなの様子を黙って見ているだけで、何も言いません。
「これ、曽呂利。お前はさっきから何も言わないが、カニが欲しくないのか?」
秀吉が尋ねると、曽呂利はつるりと顔をなでて、
「いえいえ、もちろん、わたくしも頂きとうございます。しかし」
「しかし、どうした?」
「わたくしの使い方は、一匹では足りませんので」
「何?一匹では足りぬと。ふむ、一体何に使うのじゃ?」
「はい。わたくしは勇ましい事が大好きでございますので、あのカニに相撲を取らせてみたいのでございます」
「ほう、相撲か。なるほど考えたな。よし、では二匹をつかわそう」
「いえいえ、相撲はやはり東と西に分けて、横綱(よこづな)、大関(おおぜき)、小結(こむすび)、幕下(まくした)と、それぞれいなければ面白くありません」
「おおっ、確かにそれもそうじゃ。それでは曽呂利よ、残りのカニは、みんなそちにやろう。持っていけ」
「はっ、ありがとうございます」
曽呂利さんはニコニコ顔で、残りのカニを全部持って行ってしまいました。
その為に、カニをもらいそこなった家来たちは、
「曽呂利め、相撲とは考えたな。それならわしは、武者合戦(むしゃがっせん)とでも言えば良かったわ」
と、悔しがったそうです。
おしまい
その家来は大きいカニを一匹もらって、得意そうな顔をしました。
すると、もう一人の家来が言いました。
「わたくしは、書が趣味です。ですから紙を押さえる文鎮(ぶんちん→紙が動かない様にする重り)にしたいと思います」
「そうかそうか。文鎮なら良かろう。ただ、文鎮では大きすぎては邪魔だから、小さいのを一匹つかわそう」
「はい。ありがとうございます」
その家来は小さいカニを一匹もらって、少し残念そうな顔をしました。
それからみんなは、次々と色々な事を言ってカニをもらいました。
「わたくしは、子どもや孫の代まで、いいえ、もっと先まで伝えて、家の守り神にしたいと存じます」
「わたくしは、・・・」
「わたくしは、・・・」
ところが家来の一人の曽呂利(そろり)さんだけは、みんなの様子を黙って見ているだけで、何も言いません。
「これ、曽呂利。お前はさっきから何も言わないが、カニが欲しくないのか?」
秀吉が尋ねると、曽呂利はつるりと顔をなでて、
「いえいえ、もちろん、わたくしも頂きとうございます。しかし」
「しかし、どうした?」
「わたくしの使い方は、一匹では足りませんので」
「何?一匹では足りぬと。ふむ、一体何に使うのじゃ?」
「はい。わたくしは勇ましい事が大好きでございますので、あのカニに相撲を取らせてみたいのでございます」
「ほう、相撲か。なるほど考えたな。よし、では二匹をつかわそう」
「いえいえ、相撲はやはり東と西に分けて、横綱(よこづな)、大関(おおぜき)、小結(こむすび)、幕下(まくした)と、それぞれいなければ面白くありません」
「おおっ、確かにそれもそうじゃ。それでは曽呂利よ、残りのカニは、みんなそちにやろう。持っていけ」
「はっ、ありがとうございます」
曽呂利さんはニコニコ顔で、残りのカニを全部持って行ってしまいました。
その為に、カニをもらいそこなった家来たちは、
「曽呂利め、相撲とは考えたな。それならわしは、武者合戦(むしゃがっせん)とでも言えば良かったわ」
と、悔しがったそうです。
おしまい