大工と三毛猫(2)
「ニャー」
と、小さく鳴くと、大工にすり寄って、大工の目をしきりに舐め始めたのです。
右の目を舐めると、今度は左の目を舐めます。
それに気づいた大工は、
(変な事をするわい)
と、思いましたが、目を舐められると、とても気持ちがいいので、ネコの好きなようにさせていました。
それからというもの、ネコは暇さえあれば、大工の目を舐めてくれたのです。
すると不思議な事に、大工の目の濁りは、だんだんと薄れてきました。
そして十日ばかりたつと、大工の目はすっかり治って、両目ともとてもよく見えるようになったのです。
ところがその頃からネコの目が白く濁っていき、ついにネコの目は見えなくなってしまったのです。
でも、心配する事はありません。
目の治った大工は目の見えなくなったネコを今まで以上に可愛がり、ネコは何不自由なく幸せに大工と暮らしたのでした。
おしまい