大工と三毛猫
むかしむかし、江戸の神田に一人の大工がいました。
女房が死んで、とてもさびしかった大工は、一匹の三毛ネコを可愛がっていました。
大工は毎朝、ネコのごはんを用意してから仕事に出かけます。
そして夕方に仕事が終わると、ネコの大好きな魚をお土産に買って帰ります。
ネコも大工の事が大好きで、大工の足音を聞くと、ちゃんと迎えに出るのでした。
ところがある時、この大工は目の病気になってしまいました。
そこで、医者に診てもらうと、
「これはひどい眼病ですな。残念ですが、とてもわしらの力では治す事は出来ません」
と、言うのです。
それからはあまり仕事が出来なくなり、大工はとても貧乏になりました。
もちろん、ネコに魚を買ってやる事も出来ません。
ある晩、大工はネコに向かって言いました。
「なあ、みけや。おれの目は白く濁る病気で、とても治りそうもない。仕事が出来ずに暮らしも悪くなり、このままではお前を養う事も出来んかもしれん。いったい、どうしたものかのう?」
大工は語りかけているうちに、うとうとと、眠ってしまいました。