『通勤途中と通学途中』同人 第29.5話 通勤電車―滝原美矢の場合―(2)
ちょっと寄り道した気もするけど、こうすけ君と一緒に電車に乗れると思うと割と得な気分だ。
「滝原、苦しくないか?」
通勤電車はやはりなめるものでは無いようで、辛うじて電車に乗って、ドアもギリギリ閉めたが、こんな形になる。
「寧ろご褒美」
思わず言ってしまう。
こうすけ君が一生懸命にドアに手をつき、私を守ってくれる様子を見ると、何だかニヤける。
そして、昔の出来事を思い出したら、やはりかっこいいなと思ってしまう。
こうすけ君が話しかけて来ないなら、タマちゃんの教える通りでこちから行くつもりだ。
「こうすけ君はさあ」
「ん?」
「いつもこうやって、痴漢さんから女子を守ってるの?」
こうすけ君は人好し過ぎたので、もしかして毎日のようにやっているかもしれない。
「んなわけねーだろ」
即答された。
ならこうすけ君にとって私は特別な存在だなあって、ちょっと嬉しい気もする。
「友達の家に行くにしても、こんな時間を選ぶなよ」
わざわざ会いに来ること、気付けばいいのに。
鈍感なこうすけ君にもうちょっとヒントをあげよう。
「前もこの時間に行ったことがあって、失敗したなって思ったけど、こうすけ君がいたし」
それでも、こうすけ君は体勢を維持しながら、思考に耽るようになる。
こうすけ君と一緒に電車に乗れたし、まあいいか。
しかも守られている形で。
二人ともしばらく黙って居た。
黙っていると、なんとなくこうすけ君のことを意識しちゃう。
クーラーがついてあるはずの電車が、妙に蒸し暑くなっている。
……何かやばい、私おかしくなるかもしれない。
「こうすけ君」
思わず呼んでしまう。
「ん?」
「痴漢さんになる?」
一体何を言っているのだろう、私は。
「なるかっ!」
また即答だ。まあこうすけ君ならそうなると思うが、車内で大声出すのはやはり注目されちゃう。
「滝原、苦しくないか?」
通勤電車はやはりなめるものでは無いようで、辛うじて電車に乗って、ドアもギリギリ閉めたが、こんな形になる。
「寧ろご褒美」
思わず言ってしまう。
こうすけ君が一生懸命にドアに手をつき、私を守ってくれる様子を見ると、何だかニヤける。
そして、昔の出来事を思い出したら、やはりかっこいいなと思ってしまう。
こうすけ君が話しかけて来ないなら、タマちゃんの教える通りでこちから行くつもりだ。
「こうすけ君はさあ」
「ん?」
「いつもこうやって、痴漢さんから女子を守ってるの?」
こうすけ君は人好し過ぎたので、もしかして毎日のようにやっているかもしれない。
「んなわけねーだろ」
即答された。
ならこうすけ君にとって私は特別な存在だなあって、ちょっと嬉しい気もする。
「友達の家に行くにしても、こんな時間を選ぶなよ」
わざわざ会いに来ること、気付けばいいのに。
鈍感なこうすけ君にもうちょっとヒントをあげよう。
「前もこの時間に行ったことがあって、失敗したなって思ったけど、こうすけ君がいたし」
それでも、こうすけ君は体勢を維持しながら、思考に耽るようになる。
こうすけ君と一緒に電車に乗れたし、まあいいか。
しかも守られている形で。
二人ともしばらく黙って居た。
黙っていると、なんとなくこうすけ君のことを意識しちゃう。
クーラーがついてあるはずの電車が、妙に蒸し暑くなっている。
……何かやばい、私おかしくなるかもしれない。
「こうすけ君」
思わず呼んでしまう。
「ん?」
「痴漢さんになる?」
一体何を言っているのだろう、私は。
「なるかっ!」
また即答だ。まあこうすけ君ならそうなると思うが、車内で大声出すのはやはり注目されちゃう。