日语小说原文：そして、君のいない九月が来る4。仅供学习。(4)

ある意味、そのときのようにすーっと指が通ったーー髪のけおろか、頭蓋すらも貫通して。
「ひっ」
わたしはびくっと手を引っ込めた。
触れない、実体が、ない。
彼がどこか悲しげに微笑んで、自分の両手を見つめた。
「少し前では、実体あったんだけどね。わけあって今はなんにも触れない。どうやら姿が見える人も、ほんのわずかみたいなんだ」

じーわじーわと蝉が鳴いている。
ケイタの死のショックのあまり、私はついに頭がおかしくなったのだろうか。目の前に、ケイタがいる。でもまるでケイタと違う言葉づかいをして（ケイタは「僕」なんて言わない）、その体には実体がなく、大概の人には見えないなどとのたまっている。夢でも見ているんだろうか。真夏の夢。白昼夢。あるいは幻覚。急に暑いところへ出たせいか、それとも目の前のこと頭がついていかないせいか、目の前がクラスしてきた。それさえも夢なのか、わからない。