とんち勝負
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
ある日の事、とんち名人として有名な彦一と言う子どもが、きっちょむさんにとんち勝負を挑んできたのです。
そこで村の和尚さんが立ち会いになり、山の一本道でとんち勝負が始まったのです。
「おほん、それではこれより、とんち勝負を始めるとする」
「へい。それで、何をすればいいのですか?」
きっちょむさんの質問に、和尚さんが答えました。
「うむ、わしが百を数える間に、なにか世の中になくてはならぬ物をこしらえて見ろ。それがこのとんち勝負の題材じゃ」
それを聞いて彦一は、真剣な顔で考えました。
(百を数える間に物を作るとは難しい。
しかも、世の中になくてはならぬ物とは。
だがそれは、きっちょむさんも同じ事。
きっちょむさんはなかなかのやり手と聞くが、必ず勝ってやる)
一方、きっちょむさんは、
(うわさ通り、まじめでかしこそうな子どもだ。だがそれだけでは、きっちょむには勝てないよ)